下肢静脈瘤の概要
どのような病気か
下肢静脈瘤は、立ち仕事をしている方、妊娠出産後の方に多く、遺伝的要素があると言われている疾患です。
静脈は、栄養や酸素を体中の細胞に運んでいく役目を終えて心臓に戻ってくる血液が流れる血管で、逆流防止弁があり心臓に向かって一方通行です。
足の静脈血はこの逆流防止弁を利用して重力に逆らって心臓に戻ります。
下肢静脈瘤とは、足の静脈の逆流防止弁が壊れて血液が逆流してしまう病気です。
症状について
血液の逆流が起こると、足の静脈が瘤のように膨らみ変形します。
足の血液循環が悪くなってうっ血し、血管が拡張し炎症なども起こします。
そして、足がつる、足が重たい、痛い、だるい、浮腫む、血管が浮き出てくる、傷が治りにくいなどの症状がでてきます。
また、見た目も、典型的な瘤ができるもの、紫色の毛細血管が浮き出てくるもの、色素沈着、うっ滞性皮膚炎、うっ滞性潰瘍など様々です。
各種症状写真(諸国眞太郎クリニック提供)
- 伏在型静脈瘤
- クモの巣状静脈瘤
- 静脈瘤による潰瘍
- 静脈瘤による色素沈着
治療について
概要
逆流防止弁が壊れているため薬の内服では治りません。弁が壊れて逆流を起こしている血管を内側からレーザーで灼いて閉塞させるのが代表的な治療法です。進行して太くなりすぎてしまった静脈瘤に対しては、血管内にワイヤーを通して引き抜くストリッピング手術があります。ほとんどの場合手術は15分~1時間以内に終わります。
麻酔
十分な量の局所麻酔を使います。さらに点滴から眠くなる麻酔を併用します。声をかけると応えていただける程度ですので通常の全身麻酔のような危険性はありません。
治療の流れ
▽ 手術時間の15分前に来院。
▽ 手術直前確認説明。
▽ 使い捨ての紙の術衣に着替えていただき個室ソファで待機。
▽ 手術の準備ができましたら声をかけます。
術後
麻酔が完全に醒めるまでソファで約30分間お休みいただきます。 お着替えの後、徒歩にてご帰宅いただけます。 当日は医師の携帯番号をお渡ししますので緊急時には時間帯に関係なく電話でお問い合わせしていただけます。 基本的には1週間後と1ヶ月後に受診していただき経過をみます。
手術方針
患者様によって治療の重点をおいているところが異なります。 とにかく、だるさ、重たさ、痛みなどの症状をとって欲しいという方、美容的観点から治療を希望する方など様々です。男女、ご年齢によってもその要望は異なります。 できる限り患者様のご要望に沿って治療を進めていく、オーダーメイドの治療を心懸けております。
血管内レーザー焼灼術
血管内レーザー焼灼術での治療について
弁の壊れている血管の内腔をレーザーで焼灼し閉塞させます。膝周囲から足の付け根までの弁が壊れている血管の中にレーザーファイバーを通し、ファイバーの先端からでるレーザー光で血管を焼灼します。刺入部からファイバーをゆっくりと抜くことで先端が通過した部分の血管が焼灼され収縮して閉塞します。
保険適応
2014年5月より保険適応となった最新の1470nmELVeSレーザーの機械を使ったレーザー手術です。3割負担の場合、片足につき4万円~5万円で手術を受けていただくことができます。
その他の治療方法
ストリッピング手術
静脈内の逆流防止弁が壊れている血管を抜いてしまいます。
静脈瘤の症状が進行して弁の壊れた静脈の径が15mm以上になってしまっているときレーザー手術ではなくストリッピング手術を行います。内側から焼灼するレーザー手術では肝前に収縮させることができないからです。鼠径部約1cmの皮膚切開創から弁が壊れた静脈内にワイヤーを通し大腿部の血管を引き抜きます。レーザー手術に比べて神経麻痺、出血、痛みなどの合併症が多いといわれています。もちろん、日帰り手術で当日は歩いてお帰りになれます。
硬化療法
弁の壊れている血管に泡状の硬化剤を注入し血管にわざと炎症を起こさせ硬化収縮を促し閉塞させます。外来で5〜10分でできる簡単な治療です。しかし、根本治療ではないためこれだけだと再発します。補助の治療として行います。
瘤切除
蛇行の強い下腿の血管を約3~4mmの小さな切開から静脈フックを用いて部分的に抜く治療です。補助の治療として行います。
弾性ストッキング着用
弁の壊れている静脈は足の表面を走っています。圧力の強い弾性ストッキングを着用し表面にある弁の壊れている静脈血管を外側から押さえつけます。そうすると静脈血は弁の壊れていない深部静脈に直接流入し正常な弁を利用して心臓に戻ることができます。 当院では履きやすい医療用弾性ストッキングを各種用意しております。お気軽にお声かけください。